2026年10月4日  「主の御旨のみが実現する」 使徒言行録16:1-10  箴言19;21

パウロが二回目の伝道旅行に出発する際に、父がギリシャ人、母がユダヤ人の間に生まれたテモテを同行させました。混血のテモテを伝道の協力者に選びました。さらに、テモテに「割礼」を授けました。「割礼」はユダヤ主義者にとって、彼らの誇り、命、アイデンティ、確証でした。パウロはユダヤ主義者から主イエス・キリストを信じる者に変えられた者です。イエス・キリストを信じ、告白者になってからは、「割礼」を否定してきました。救いは、人間の行いや功績に関係なく、神の一方的な恵みを信じる信仰であると考え、「割礼」を受けることは、イエスの十字架を無駄にすることだと、「割礼」を否定していました。ユダヤ律法主義者は、割礼を否定するパウロを許すことができませんでした。パウロが「割礼」をテモテに施してから、ユダヤ律法主義者の迫害が、異邦人やギリシャ人らに対して激しくなりました。パウロは使徒職が剥奪されました。聖書学者には、パウロが「割礼」を施したとは考えられないと、歴史的事実を否定する学者もいます。パウロがテモテに「割礼」を授けた出来事は、キリスト教の歴史にとって重要な意味を有した出来事です。パウロの一途な信仰、福音宣教に対する篤い思いが表れていると思います。

パウロは、何をおいても人の救いを優先しました。「人の救いのためなら、何でもする」と言うのがパウロの行動原理でした。「わたしはすべての人に対して自由であるが、出来るだけ多くの人を得るために、自ら進んで、すべての人の奴隷になった。ユダヤ人に対しては、ユダヤ人のようになりました。ユダヤ人を得るためである。律法に支配されている人に対しては、わたし自身はそうではないのですが、律法に支配されている人のようになりました。律法に支配されている人を得るためです。律法を持たない人に対しては、律法を持たない人のようになりました。律法を持たない人を得るためです。弱い人に対しては弱い人のようになりました。弱い人を得るためである。すべての人に対してすべてのものになりました。何とかして何人かを救うためです。福音のためなら、わたしはどんな事でもする。」と言っています(コリントⅠ9:19)。福音のため、人の救いのためなら、わたしはどんなことでもする、パウロの行動原理です。人が希望を失い、苦しみ絶望しているならば、なんでもする。喜んで奴隷になる。パウロの福音に対する情熱、誠実、真摯な態度が表れています。パウロの信仰、祈り、生きる原理です。

パウロが二回も伝道旅行の予定を変更しなければならなかったと言っています。一回目は、アジア州に伝道に行こうとしましたが、それが許されず、やむなく北へ転じ、フリギア、ガリラヤ地方へ入って行きました。二回目の予定変更は、さらなる伝道の機会が与えられたと心を躍らせながら、ビティニア州に入ろうとしたが、許されず、港町トロアスに下った。そこで一つの夢を見て、急きょエーゲ海の向こうのマケドニア、即ちヨーロッパに渡って行くことになったと言うことです。その意味では、この伝道の旅は予定変更の旅だと言えます。伝道の旅の目的は、バルナバと回った第一回の伝道旅行の後の問安でした。しかし、その計画は全く変えられてしまったのです。前回旅を共にしたバルナバと、マルコを巡って意見を異にし、別々の旅をすることになりました。ギリシャ人の伝道のために、二回の予定変更、度々の苦難、試練、迫害に直面し挫折します。パウロにとって、神は人の願いを叶えてくれない神である事実を知るためのの出来事だったでしょうか。一般的に考えるならば、神は人の願いを叶えてくださる、人の予定や計画を実現してくれるのが神です。願いを叶えてくださるから、神を受け入れ、拝み、祀ることができるのだと思います。しかし、パウロの信仰は違います。人間の予定や計画を変更する神です。人は、予定や計画が、挫折しないで、自分の計画通り歩むのが、幸せであり、成功だと言います。ですから、計画や人生設計を変更したくない、挫折したくない。しかし、現実は、その通りにいきません。予定を変更せざるを得ないことが次々に襲います。自分の弱さや失敗で、不条理な、理不尽な出来事を変更せざるを得ないことが起こります。問題は、その予定変更をどのように受け止めるかだと思います。後退や挫折、敗北としないで、積極的に肯定的に受け取ることができる。それが今日のメッセージだと思います。

パウロは、伝道の成果を期待し、心躍らせて進もうとした道が、二回も阻まれる。予定を変更しなければならない。失望落胆して、涙ながらにトロアスに下って行きました。しかし、不思議な出来事、出会いが起こります。そこで医者のルカに出合うのです。ルカは「ルカによる福音書」とこの「使徒言行録」の著者です。ルカは医者、パウロは患者。パウロの最高の同伴者ルカと出会うのです。ルカも、パウロとの出会いによってキリストを知りました。それはルカの生涯にとって決定的なことになりました。ルカもまた大きな予定変更をしました。パウロと共に伝道旅行に出かけて行くのでした。

パウロはルカと出会うことによって「夢」を見ます。一人のマケドニア人が「こちらに渡って来て、わたしたちを助けてほしい」と、しきりに願う夢です。パウロは、その夢を見て、一つの決断をします。それはマケドニアに福音を伝道するように招かれていると信じたのです。そして、予定と計画を変更し、マケドニアに渡って行くことする決断しました。その決断によって、フィリピに、コリントに、テサロニケに教会が生まれるのでした。「異邦人に福音を伝える器とする」という神の御旨・計画が実現するのでした。パウロは、最初は自分の弱さのゆえに、急きょ予定を変更した。それは悔しい、辛い思いをしたはずです。予定変更は辛いことが多いです。予定変更のあとは、落ち込みます。失敗だと思い込みます。悲観的になりやすいです。しかし、その背後には神の計画、計らい、勝利があるのです。「人の心には多くの計らいがある。しかし、主の御旨のみが実現する」(箴言19:21)。どのような出来事にもその背後に神の支配と導きがあると信じて、主イエスから託された福音宣教に励んでいきたいと思います。